2026.01.16
1. 学生フォーミュラと弊チームの紹介
私たちにとって学生フォーミュラとは
九州工業大学学生フォーミュラチーム「KIT-formula」は福岡県北九州市を拠点に活動する学生フォーミュラチームです。
私たちは「学生が紡ぐ、ものづくりの未来」という言葉をビジョンとして活動に取り組んでいます。「紡ぐ」という言葉には学生が主体となり、仲間と協力しながら技術と熱意で創意工夫に取り組むという意味が込められています。
学生フォーミュラは他チームと競い合うコンペティションであり、マシンの戦闘力を高めて高い順位を目指すことが最大の目標です。ですがその中でも私たちは新しい技術の導入に果敢にチャレンジし、チームワークとものづくりについて深く学んでいきます。
fig1.25年度大会結果総括
2026年度は総合順位3位の獲得を目標に掲げ、活動を進めております。昨年度、本番でマシンのポテンシャルを十分発揮させることができなかったという悔しさをバネに、車両の熟成に取り組んでまいります。
そんな私たちKIT-formulaの強みは以下の3点であると考えます。
- 高い品質を追求するものづくり
- 積極的な新規機能の投入
- 積極的な広報活動
1.高い品質を追求するものづくり
高い精度を追い求めるメンバーの意識のおかげで、私たちの車両の品質は非常に高いものになっていると自負しています。
フレームの溶接ひとつをとっても正確な端面加工や溶接前の脱脂を徹底することできれいな溶接部を実現しています。また、下準備を徹底する姿勢は美しい塗装にも表れています。
fig2.フレームの溶接・塗装
2.積極的な新規機能の投入
大会に向けて毎年車両を作り変える必要があるため時間は限られていますが、その中でも私たちは積極的に新しい技術にチャレンジし、車両の性能を高めています。
電装班ではCAN通信を導入し、アクセラレーションでの自動シフトアップ機能の搭載にチャレンジしました。また、計器の配置や配色にもこだわり、ドライバーにとって運転しやすい環境を実現しています。現在は新たにマシンの状態をリアルタイムで監視するテレメトリーシステムの構築にチャレンジしています。
fig3.電装班の取り組み
また、クルマの動きをセッティングする上で重要なファクターであるLSD3 に関して、弊チームでは企業様との共同開発を行っています。
LSDの効きの強さを外から簡単に変えられる機能を活かして、モータを使ってLSDの効きを制御する機構の実現に向けて取り組んでいます。
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リミテッド・スリップ・デフの略称で、コーナリング中に左右のタイヤに発生する駆動力を調整することができる。
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fig4.共同開発LSD
3.積極的な広報活動
私たちは積極的な広報活動を行うことが弊チームのみならず学生フォーミュラ全体の知名度向上につながると考え、積極的な情報発信を行っています。
XやInstagramでの日常的な情報発信に加えて、YouTubeでの動画投稿も行っています。
また、様々なイベントの企画・運営をチームが主体となって行っている点も私たちの大きな特長です。
2025年は九州工業大学内にて新車発表会を行い、ご支援いただいた企業様や大学の教職員、また一般の方々もお招きして25年度車両のお披露目を行いました。
新車発表会の様子は多くのメディアに取り上げていただき、この件をきっかけに普段の活動や走行テストの様子も取材いただきました。
fig5.新車発表会の様子
また、北九州市で開催された北九州を拠点にものづくりを行う企業・団体・個人が集まった「3DPの集いin北九州」にて講演を行うなど、地域との連携にも積極的に取り組んでいます。
fig6.地域イベントでの講演の様子
2. エアロデバイス班25年度の取り組み
KIT-formula エアロデバイス班について
KIT-formula エアロデバイス班はダウンフォースの獲得による車両の運動性能向上への寄与を目標に、Front Wing, Rear Wingをはじめとする空力デバイスの開発に取り組んでおります。 1年間で目標設定・設計・製作・評価のプロセスを遂行し、毎年改良を加えています。
fig7.エアロデバイス班 Vプロセス4
fig8.エアロデバイス班1年間の流れ
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車両開発で使用される手法のひとつ。V字モデルの左側が開発工程を 表し、右側がテスト・検証工程を表す
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2025年度の取り組み
Brambleの導入
24年度まで私たちはCADに付随するCFDツールを用いて空力開発を行っていましたが、以下のような課題がありました。
- 解析を行う能力がPCのスペックに依存するため、解析時間が膨大となってしまう
- 設定できる条件が少なく、タイヤ周辺の流れや乱流に対してアプローチを行うことが難しい
- 自分たちで設定したCFDが本当に正しいのかを評価することが難しい
25年度は新たにTotalSim Japan社様のクラウドベースCFD「Bramble」を導入し、空力開発に取り組みました。
クラウドベースであるため時間効率が大幅に向上し、形状の設計~解析結果分析~結果を踏まえた形状の再検討というサイクルを効率よく回していくことが可能となりました。
Bramble上で結果を一元管理できるため、異なる形状の比較や班員同士での議論が非常にスムーズになりました。
fig9.形状の変更による性能変化(数字を一部伏せております)
また、Brambleの高いメッシュ品質と適切な乱流モデルにより、渦の成長や崩壊に注目した形状の検討が可能になりました。
fig10.FWEP Vortexに着目し、形状改善を行っている様子
加えて、CFDモデルに車両運動モデルを組み込むことにより、ピッチやロールといった姿勢変化を考慮した解析やエアロマップの出力を行うことができました。
fig11.形状変更によるRear Wing 性能変化の考察(数字を一部伏せております)
fig12.エアロマップの出力(数字を一部伏せております)
設計期間では、Brambleを導入したことにより、車両で発生する流れをより正確にとらえ、形状の最適化を行うことができました。また、姿勢変化を考慮するなど、車両の空力特性についてより深い考察を行えました。
検証の実施
Brambleの導入による解析の信頼性向上と、弊チームの製作精度向上が功を奏し、タフト法では解析と実機の合わせこみができている部分が見られました。
fig13.タフト法実施の様子
一方で走行中の発生ダウンフォース実測については絶対量・前後バランス共に乖離が見られ、課題が残る結果となりました。
3. エアロデバイス班26年度の目標
26年度は昨年度の取り組みを踏襲しつつ、新たな試みにもチャレンジしていきたいと考えています。目標ダウンフォース量については昨年度同様エアロバランスを考慮しつつ、コース走行にアプローチして設定します。また、十分な距離のテスト走行が行える弊チームの強みを活かし、実走行でデータを集めることを念頭に置いています。
fig14.2026年度車両「KS-22」データ(開発中)
解析モデルの改良
昨年度の検証で解析値と実測値に乖離が見られた要因として、解析モデルの作りこみが不足していたことも一因として考えられます。このため、解析モデルを見直し、より現実に即した解析を行っていきたいと考えます。
具体的にはホイール形状の再現やドライバー及びエンジン周囲のモデル作りこみに取り組みます。また、コース走行での特定の姿勢に焦点を当てた解析を行うことで、コース走行のタイム向上に寄与するという目標に対してよりダイレクトにアプローチします。
fig15.特定の姿勢下で解析を行っている様子
サイドエリアの開発
例年あまり着目していなかった前後タイヤの間の空間を開発領域としてとらえ、車両中心で発生するダウンフォースの増加を狙います。
サイドカウルの床面をディフューザー形状とすることでダウンフォースが獲得できると考え、設計を進めています。
fig16.開発中のサイドディフューザー
サイドエリアはFront Wing後方の気流やフロントタイヤの影響を大きく受けるため、フロントセクションが生み出す流れを見ながら形状の検討を行います。
また、サイドエリアはダウンフォースの発生のみならずラジエターへ十分な風を供給することも求められます。そのため、Bramble上でラジエターを考慮した冷却モデルを構築することにより、ラジエター周辺の流れ及びラジエターに流入する質量流量の評価を行います。
Front Wing及びRear Wingの改良
Front Wing、Rear Wingは製作リソースを考慮し前年度の部品を流用しつつも、アップデートを加えて性能向上を狙います。
Front WingではSub Flapで3Dプリンター製のエレメントを導入することにより、後方の気流を効率的に制御し、後方で発生するダウンフォースの向上につなげます。
Rear Wingでは前年度Endplate表面で剥離や下方向に垂れる気流が発生しており、流れが芳しくなかったという事実を踏まえ、海外チームで頻繁にみられるEndplateに取り付ける整流版(Upwash Generator)の有効活用にチャレンジします。
fig17.開発中のFront Wing及びRear Wing
検証の精度向上
タフトの偏向角を定量的に評価する手法を確立することで、検証としての有意性を高めます。 また、実測手法についても車両の対気速度をピトー管を用いて測定することにより、精度の向上を狙います。
26年度は昨年度までのノウハウを引き継ぎつつ、より高度なエアロ開発を目指して取り組んでいく所存です。
4. まとめ
クラウドベースCFD「Bramble」を活用することにより、机上での設計最適化プロセスを迅速に行うことができるようになり、また様々なケースを考慮することで空力開発を深化させることができました。
- Brambleをさらに有効活用し、空力開発を推進すること
- 実走行において有意なデータを集め、CFDと比較すること
の両面からアプローチすることで、チームの目標達成に貢献するエアロ開発を行っていく所存です。

KIT-formula エアロデバイス・プレゼンテーション・渉外 担当



















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