2026.02.17

1. チーム紹介

大阪大学フォーミュラレーシングクラブ(OFRAC)・大阪大学公認団体

全日本学生フォーミュラ大会出場を通し、将来活躍するエンジニアとして知識や技術を身につけることを主目的として活動。第一回大会から参加し、2010年と2018年に総合優勝を達成しています。
常に新しい技術に挑戦しており、これまでにF1で使用されていたDRS(2014年)やCFRPモノコック(2022年〜)、アクティブダンパー(2025年)とほぼすべての分野において、他大学にはない技術を開発・実践していることが一つの強みになっています。
こうした攻めの開発が好成績にも繋がっており、2025年では車両の性能を競う動的審査において、加速性能を競うアクセラレーション審査で5位、1周のタイムを競うオートクロス審査でICV部門3位になりました。
また、書類審査が中心の静的審査においても好成績を収めており、2025年は設計の妥当性を競うデザイン審査とプレゼン能力を競うプレゼン審査で2位、そして空力分野においても、直近の2年でベストエアロ賞の最終審査に進んでいます。
こうした動的審査、静的審査の両方で好成績を収めたことから、2025年大会ではICV部門総合3位を獲得することができました。

2. CFD・空力開発に関する今までの課題

OFRACにおける空力開発のプロセスは、まず基本的な諸元設計からスタートし、その後CFD(数値流体力学)を駆使した詳細設計へと移行します。設計完了後は製作期間に入りますが、ここでは他パートの作業補助も並行して行いつつ、ここ2年の実績としては4月中旬頃にマシンの完成を迎えています。その後は実走による試走を重ね、その結果を踏まえて夏休み期間中にパーツの再製作を行うというサイクルが定着しています。

しかしながら現状の課題として、一度製作を完了してしまうと、そこから空力的な性能向上のためのアップデートを行うことが非常に困難であるという点が挙げられます。実質的には、破損したパーツの補修や補強といった、維持・修繕のための設計変更にとどまってしまっているのが実情です。

また、製作した実パーツの性能評価についても大きな壁に直面しています。これまでにひずみゲージやストロークセンサーを用いて走行中の荷重測定を試みてきましたが、計測データに含まれるノイズがあまりに大きく、肝心の空力性能を適切かつ定量的に評価できていない状態が続いています。

CFD解析の環境面に関しては、新たに『Bramble』を導入したことが大きな転換点となりました。これにより、従来の解析よりも実際の車両運動に密接した旋回時の解析などが実施可能となり、空力開発の技術レベルを一段階引き上げることができました。とはいえ、このBrambleを最大限に有効活用するための設計フローや具体的な手法の確立までは至っておらず、ツールの持つポテンシャルを100%引き出しきれていないのが現状です。

さらに、根本的な課題としてCFDに関する理論的な知識不足も挙げられます。大学の講義等ではCFDの実践的な内容が深く取り上げられる機会が少なく、ブラックボックスの中身である「実際にどのような計算が行われているのか」という原理原則を十分に理解できないまま、ツールとしてCFDを操作しているという状況にあります。

3. 今年度の⽬標と取り組み

今年度の活動においては、「3年連続表彰台」という壮大かつ長期的な目標を掲げ、その実現に向けてチーム一丸となり設計・製作を進めています。

具体的な開発方針としては、まず2025年大会で露呈した弱点や課題を徹底的に分析することから着手しました。その上で、私たちが本来持っているマシンの強みや長所を犠牲にすることなく、ネガティブな要素だけを的確に解消していく方向性で、慎重かつ大胆に設計を行っております。このような堅実な開発プロセスを経ることで、弱点の少ない「穴のない」完成度の高い車両を目指すとともに、どのようなコンディションであっても常に好成績を収められる、安定した強さを持った車両を作り上げていく所存です。

特に空力開発の面におきましては、昨年度(2025年)車両の挙動データやCFDによる事後分析によって、解決すべき具体的な空力的課題が浮き彫りになりました。今年度はこれらの課題を一つひとつ解消していくことはもちろん、Brambleをより積極的に活用することで、単なる空力性能の追求にとどまらず、実際の車両運動(ビークルダイナミクス)と密接に連携した開発を行っていき、過去2年できなかったベストエアロ賞の受賞を目指してまいります。

昨年の反省点として、2025年モデルでは旋回中の車両姿勢を一つの代表的な状態に平均化し、その固定された姿勢を基準に解析を行っていました。しかし、実際の走行ではピッチ角やロール角が刻々と変化するため、シミュレーションと実車との間に乖離が生じ、そのわずかなズレが結果としてパフォーマンスの低下を招く要因となっていました。そこで今年は、コーナリングのプロセスを5つのフェーズに分割して解析を行う手法を取り入れます。これにより、弱点となっている領域により深く焦点を当てることが可能になります。さらに、サスペンションジオメトリから実際のピッチ角やロール角を高精度に予測し、より現実の走行状態に近い車両姿勢を定義した上で解析・設計を進めることで、シミュレーションの精度を飛躍的に高めていきます。

そして今年度の特別な体制として、私自身はエアロ班のリーダーとしての責務を全うしつつ、兼任でトラックエンジニアも務めさせていただくことになりました。 トラックエンジニアという視点に立った時、エアロダイナミクス(空力特性)を単なる数値として見るのではなく、車両運動の一部として十分に活かしきることができれば、それは必ずマシンの「速さ」に直結すると確信しています。そのため、現代のトップレーシングチームにおいてはもはや常識とも言える「エアロマップ」の構築に注力します。導入したBrambleをフル活用して精度の高いマップを作成し、それを実際の車両セッティングの現場に落とし込むことで、理論と実践が噛み合った開発を実現したいと考えております。

さらに、これまで課題であった実走時の測定方法についても、空力性能をより正しく評価するために抜本的な見直しを図ります。 具体的には、現場での運用のしやすさと計測データの信頼性の向上を両立できるよう、システムの改善を進めていきます。より正確なデータ計測を可能にすることで、実測で得られた空力性能とCFD解析値との間に生じる乖離(誤差)を定量的かつ明確に評価できる体制を整え、シミュレーションの精度向上と実車性能の向上につなげていきます。

また、解析ツールであるBrambleに関しては、単にツールを使用するだけでなく、より高度に有効活用できるよう、背景にあるCFD(数値流体力学)の理論的な理解を深める学習にも力を入れていきます。 そして、今年度得られた知見や構築した解析手法が一過性のものとならないよう、チームの技術資産として定着させることにも注力します。将来にわたって継続的な開発とツールの有効活用が可能となるよう、後輩たちへの技術継承やマニュアル化を丁寧に行い、来年度以降も進化し続けられる強固な基盤を築いていきます。

以上の開発・改善を行っていくことで、今年度だけでなく、数年後も「強い阪大」を維持できるような開発プロセス・体制を築いていきます。そのためにはやはりBrambleを活用することが必要不可欠ですので、今後とも変わらぬご支援ご協力をお願いしたいと考えております。


筆者の写真

この記事を書いた人:
久木原 優真
役職・担当
26年度 Project Leader
Aerodynamics Leader
Presentation Leader