2026.04.16

チームの紹介

横浜国立大学フォーミュラプロジェクト(YNFP)は、2003年に横浜国立大学工学部の学生4名によって設立された学生フォーミュラチームです。私たちは学生主体で、フォーミュラタイプの小型レーシングカーを一から企画・設計・製作・運用まで行い、実際に車両を作り上げる過程を通して、自分たちの技術力や開発力を高めることを目指して活動しています。

私たちのチームは、2005年の第3回学生フォーミュラ日本大会で初出場を果たし、総合8位およびルーキー賞を含む3部門受賞という結果を残しました。その後も活動を継続し、エンジン車両の時代には2011年度、2016年度、2019年度の大会で総合2位を獲得するなど、全国上位の成績を積み重ねてきました。

2020年度からは、将来の自動車技術の流れを見据え、EV(電動車両)カテゴリーへと転向しました。電装・高電圧系を中心とした新しい分野への挑戦に加え、コロナ禍による活動制限や部員数の減少も重なり、思うように開発が進まない時期が続きました。2022年度は大会出場を見送り基礎検討に専念し、2023年度は少ない人数での体制で設計活動を継続し、2024年度にはEV転向後初の車両完成を果たしました。

こうした試行錯誤を重ねた結果、2025年度には新入生や学内OBの協力を得て体制を立て直し、学生フォーミュラ日本大会2025において、EV転向後初となる車検通過および全動的審査の完走を達成しました。最終的にはEV総合7位という結果を収め、EV車両開発に必要な技術的な土台を築きました。

現在、私たちは部員21名で活動しており、今年度は「強い横国を創る」というスローガンのもと、活動を進めています。エンジン車両時代の実績にとらわれるのではなく、EVマシンとして新たな方向性を模索し、チームとしての強みと車両性能の両面から競争力のある開発を目指しています。

チームの約3分の1は文系メンバーで構成されており、車両開発に加えて、チーム運営や渉外、組織づくりにも注力しています。文理の枠を越え、それぞれの役割と強みを活かしながら、全員で開発に取り組んでいます。

設計・解析・製作・評価のすべての工程にチームとして向き合いながら、より完成度の高いEVマシンを自分たちの手で作り上げることに本気で取り組んでいます。これまでに得た経験を次の成果につなげ、EVカテゴリーでの上位、そして優勝を目指して挑戦を続けていきます。

目標

今年度の空力班としての開発における最大のテーマは、「YNFPの車両特性に最適化された空力設計を見つけ出すこと」です。フォーミュラカーというと、ウィングを装着してダウンフォースを増やせば速くなる、というイメージを持たれがちです。しかし実際には、車両重量やパワートレイン、タイヤ特性、サスペンション、さらにはコースの特徴など、さまざまな要素との兼ね合いで最適な設計は変化します。単に強いダウンフォースを追い求めるだけでは、ドラッグの増加や電力効率の悪化によって、車両全体としての性能向上につながらない場合もあります。
私たちYNFPが目指しているのは、単純に「大きなダウンフォース」を得ることではありません。車両全体としてラップタイムの向上につながるよう、抵抗を抑えつつ必要な荷重を効率的に発生させる、バランスの取れた空力設計を追求しています。

YNFP独自の車両特性と課題

YNFPのマシンには、他のEVチームのマシンと比べたときに、大きく異なっている特徴があります。空力設計を進めるうえで、車両全体としての完成度やハンドリング特性、他の部品の設計に大きな影響を与えるこれらの2つの特徴を考慮する必要があります。

一つ目は、車両重量の制約です。私たちのマシンはEVですが、採用しているモーターが他チームと比較して大型で重く、バッテリーも重量があります。その結果、車両全体として「重い」という特性を持っています。重い車体に対して、闇雲に強力なダウンフォースを与えることはドラッグや車重の増加を招き、加速性能や電力効率の悪化を招きかねません。したがって、私たちは「強力なダウンフォース」よりも、「抵抗を最小限に抑えつつ、必要な荷重を効率よく稼ぐ」エアロ設計が求められています。

二つ目はバッテリー配置の独自のレイアウトです。ほとんどのEVチームがバッテリーをドライバーの後方に配置しているのに対し、YNFPでは慣性モーメントを低く抑えることを狙い、側方配置を採用しています。この構成は運動性能面での利点がある一方、車体側面のボリュームが大きくなりやすく、空力的には不利になりやすいという課題を抱えています。側面形状が気流に与える影響を正しく把握し、後流や抵抗の増大を抑える設計が不可欠です。

さらに、YNFPにとって、EVクラスへ転向してから初めての本格的な空力設計となります。限られた人数と期間の中で設計・製作を行う学生フォーミュラでは、車両完成後に大きな設計変更を行うことは容易ではありません。そのため、空力中心や重心位置、サスペンション特性を踏まえたうえで、車両全体としてどのような空力効果が求められているのかを事前に把握し、それを前提とした設計を行う必要があります。

加えてこれまでの開発では、ノーズやサイドカウルといった外形の形状によって、どの程度のドラッグや乱流が生じさせているのかを具体的な数値として把握することができていませんでした。その結果、形状に対する定量的な評価が十分とは言えず、「本当に良いデザインなのか」を客観的に判断することが難しい状況でした。今年度はこうした課題を踏まえ、ノーズやサイドカウルの形状そのものを評価できる設計を行うことがチームとして重要です。

CFDで実現したいこと

今年度、私たちがCFD解析を通じて実現したいことは、「設計の定量化」です。 YNFPのマシンはこれまで、その形状が実際にどのように気流を乱しているのか、あるいはドラッグを発生させているのかを、明確な数値として把握する手段がありませんでした。そのため、これまでの設計は理論や経験則に基づく推測に頼らざるを得ない部分がありました。 今年度はCFDを導入することで、これまで目に見えなかった空気の流れを可視化し、各パーツが発生させるドラッグやダウンフォースを数値として把握することで、形状ごとの優劣を客観的に比較できる状態を目指しています。感覚的な設計から脱却し、数値的根拠に基づいた「YNFPの車両特性に最適化されたエアロパーツやボディワーク」を選択することこそが、私たちが目指すゴールです。

Brambleを活用した取り組み

私たちYNFPにとって、本格的なCFD解析を行う上で一番のハードルとなっていたのが、計算資源の不足でした。複雑な流体解析を行うためには高性能な計算環境が必要で、チームの保有しているPCでは解析に多くの時間を要し、短期間で様々な設計案を検討するのが困難でした。
クラウド上で演算処理を行うBrambleを活用することで、私たちは手持ちの機材性能に依存することなく、本格的なCFD解析に取り組むことが可能となります。環境を最大限に活かし、トライ&エラーを繰り返すことで、YNFPの車両特性に合致した最適解を導き出したいと考えています。

おわりに

2019年のコロナパンデミック以降、YNFPのCFDを活用した空力設計は途絶えていました。だからこそ、今年度の私たちの活動は、単に良いパーツを作るというだけでなく、チームにとってさらに大きな意味を持っています。 いま、YNFPの空力開発は、TotalSim Japan様のご支援のもと、これまでで最も本気のスタートラインに立ちました。この解析を通して得られる経験と知見を、必ずマシンとチームの成長につなげていきます。

この記事を書いた人:

筆者1の写真

小笠原 康祐
パワートレイン班リーダー、制御、解析、エアロダイナミクス担当

筆者2の写真

村上 大樹

エアロダイナミクス班

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